『図書館の魔女』勉強会 第一巻 1やまざとでのさいごのいちにち⑩

 

 

 P14 L15 任(まか)された炭焼き窯(かま)の、最後に火を入れた一本に「窯止(かまど)め」を施(ほどこ)さねばならない。 

「炭(すみ)」です。

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 「炭火(すみび)焼き」とか「備長炭びんちょうたん)使用」とか、あるいはお部屋の消臭剤に「炭と 白檀(びゃくだん)の香り」とか、バーベキュー用のものは百円ショップでも扱っていますね。現在でも生活の中で見かける文字ではあります。防湿剤としては古墳時代から使われているようです。

もともとは、木の燃え残り、少し進化すると燃やしている木に土をかぶせて燃焼を止めるなどでできた「消し炭(けしずみ)」だったと考えられています。炭は燃焼時間が長く、「煙」があまり出ません。洞窟生活を送っていた太古の人類たちには重宝したのではないでしょうか。ただ、「炭」として作り利用していたのかどうか、出土品からは今のところはっきりとした証拠を得られていないようです。

 

「炭」は木を「蒸し焼き」にすることで作ります。それが「炭焼き」です。検索すると一斗缶(いっとかん)やアルミホイルを利用して自分で作る方法を紹介している方が何人もいらっしゃいますね。キリヒトは「窯(かま)」で作っています。

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窯の内部を700度とか1000度に何日も「蒸し焼き」にするので、大量の薪(まき)が必要です。自分の家の中の煮炊きや暖房なら、単に薪を炉にくべればいいわけで、わざわざ大量の薪を消費してまで「炭」を作る必要はないのです。

「炭」はその火力の強さが必要とされるのです。たとえば古代の「製鉄」。

「莫大な」量を必要とした、らしいのですが、それが具体的にどのくらいなのかまではサーチ力不足でわかりません。たとえば、奈良の大仏を鋳造するのに「16656斛(こく)」の「炭」が使われたそうですが、1斛=10斗として、現在だと1斗=約18ℓで、ええーと・・・300㌧? 奈良時代とは度量衡が違いますから、正確ではありませんが、それでもこの1㌧の炭を得るのにどれだけの薪を燃やさなければならないんでしょう。

この「16656斛」という数字は、『東大寺要録』という文書にあるそうで、そのことは樋口清之先生の『新装版 日本木炭史』(講談社学術文庫)から引用させていただきました。

とにかく、「炭焼き」は「製鉄」と深いつながりがあるのだそうです。キリヒトもそうでしたね。彼は「下手の鍛冶屋(かじや)」に、その炭を納めています。そのつながりはこの後にちゃんと描かれています。