『図書館の魔女』の勉強会 第一巻 2しゅったつのときはちかづく⑥-2

 P31L10 自分用には柄のところが太く膨らみ、体重をあずけるのに向いている櫟(いちい)の根を削り出したものを選んでいた。

えー、「櫟(いちい)」の謎の寄り道です。

奈良女子大学大学院人間文化研究科の文化史総合演習成果報告というHPで公開されている

奈良の都で食された菓子

http://www.nara-wu.ac.jp/grad-GP-life/bunkashi_hp/kodai_kashi/nara_kashi.html#mokuji

の中の「古代に食された菓子」で、

古代の日本において「菓子」といえば果物をさす言葉として認識されていました

とあり、そこに、関根真隆『奈良朝食生活の研究』吉川弘文館 1969 からの引用で

 
季節 菓子
春の味覚 梅子(うめ)  枇杷子(びわ
夏の味覚 李子(すもも) 梨子(なし)
秋の味覚 棗(なつめ)  桃子(もも) 生柿(なまがき)橘子(柑橘系)
栗(くり) ノブドウ 瓜(まくわうり)郁子(むべ)
冬の味覚 甘子(こうじ) 胡桃(くるみ)
保存食

椎(しい) 伊知比古(いちい) 榧(かや)

という表があるのですが、一番下の「保存食」に「伊知比古(いちい)」という文字があります。これが、何を示しているのかについて「いちご」説と、「いちいがし(クヌギ)」説があるのだそうです。

ところが「イチイガシ」は「イチイ」とはまた別の植物なのだそうです。

イチイガシ(一位樫、学名:Quercus gilva)はブナ科コナラ属の常緑高木

Wikipedia

で、この実は「灰汁(あく)抜き」をしなくても食べられるのだそうです。あーもう、なにがなんだか。

でも、「体重をあずけるのに向いている」ってどういうことでしょうね。硬い?柔らかし?よくしなる?よくわかりません。

ちなみにキリヒトには「黒檀(こくたん)」の杖が渡されます。「長らく先生が大事にしていたもので」「杣道(そまみち=やまみち)をたどる時には持ち出したことがなかった」杖です。その前に「選んでいた」とあるので、複数の杖があることがわかります。先生は山道を歩くときには杖が必要なのでしょうか。

キリヒトの杖はこの後にまた出てきますので、そこで触れたいと思います。イチイはここまで。