『図書館の魔女』の勉強会 第一巻 2しゅったつのときはちかづく⑥-1
P31L10 自分用には柄のところが太く膨らみ、体重をあずけるのに向いている櫟(いちい)の根を削り出したものを選んでいた。
えー、「櫟(いちい)」です。はじめは「根を削り出したもの」というところに引っかかったのです。竹の根=地下茎ですね=を使った杖というのはあるようですが、本文ではわざわざ「櫟(いちい)の根」と特定しているので、特に杖に適している素材なのかな、と思って「櫟(いちい)」を調べだしたところで停止中。「イチイ」を検索すると
は?です。同じ字なのに? こちらは「クヌギ」
日本ですと、岩手県・山形県より南に分布する、まるっこいどんぐりのなる木です。実は渋みが強いので灰汁(あく)抜きが必要ですが、縄文時代の遺跡から発掘されているそうなので、古代から食用とされていたようです。木自体も成長が早く、建材として利用されたり、樹皮は漢方薬に用いられるそうです。
こちらが「イチイ」。全然別物じゃない!こちらは日本ですと中部地方以北の寒い地域に分布するそうです。
木材としては年輪の幅が狭く緻密で狂いが生じにくく加工しやすい、光沢があって美しいという特徴をもつ。工芸品や机の天板、天井板、鉛筆材として用いられ、岐阜県飛騨地方の一位一刀彫が知られる。また弾力性に富むことから、アイヌはイチイを狩猟用の弓を作る材料として使用した。イチイのアイヌ語名「クネニ」は、「弓の木」の意味である。
古代日本(一説には仁徳天皇の時代)では高官の用いる笏を造るのにこの木が使われた。和名のイチイ(一位)はこれに由来するという説もある。2019年、徳仁天皇の即位の礼、大嘗祭においても、イチイ製の笏が用いられた。
水浸液や鋸屑からとれる赤色の染料(山蘇芳)も利用される。 ヒノキよりも堅いとされることや希少性から高価である。『Wikipedia』
ただ、樹皮はどちらも「縦に割れ目ができる」とあるので似ているのかもしれません。今は植物園に出かけるわけにはいかないので、確かめられません。
櫟 挧 椚 様 橡 櫪 『漢字源』(学習研究社)
ええーっ、全部「くぬぎ」です。それぞれ意味があるのですが、「櫟」の字はもともと「樂(がく)」で、「糸」の上の部分は「繭(まゆ)」を表し、真ん中の「白(はく)」は「どんぐり」を表しているのだそうです(「その実のしろい中みを示す」『漢字源』)。それに+木=樂。その後「樂が音楽・快楽の意に転用されたので(木へんをつけて)櫟で原義をあらわす」(『漢字源』)ようになったのだとか。
確かに
またクヌギは、ヤママユガ、クスサン、オオミズアオのような、ヤママユガ科の幼虫の食樹の一つである。『Wikipedia クヌギ』
と、野生の「繭」がつく木であったです。それじゃー、クヌギじゃーないかー。
では次に「イチイ」を引いてみましょう。いたわる、イチ、いち、いちご、いちじるしい、イツ・・あれ?ない?ありません。少なくとも『漢字源』には「イチイ」という漢字は収録されてないのです。あー、『大漢和辞典』処分しなけりゃよかったなぁ。30年近く、引っ越ししてもその都度ちゃんと移動させてたのですが、この前の引っ越しの時、「図書館で調べれられるよ」と処分してしまいました。図書館に行けなくなる事態が起こるなんて想定外!
じゃあ「櫟」を「イチイ」と読むのが間違いかというと、そういうわけでもありません。地名や苗字に使われてますし、現に作品の中でも使われています。あー、どなたかこの謎を教えてください。