『図書館の魔女』勉強会 第一巻 1やまざとでのさいごのいちにち⑤

P12 L10 漉いた薄手のしなやかな紙に

 「紙」です。

 でも「紙」に関しては、日本十進法でも585番台が「パルプ・製紙工業」に当てられているくらいにたくさんの書籍がありますから、ここではちょっと視点を変えた本を紹介することにします。

『紙つなげ!彼らが本の紙を造っているー再生・日本製紙石巻工場』(佐々涼子 早川書房 2014)

 副題から分かる通り、東日本大震災で被災した製紙工場が奇跡的とも言える復活を遂げた様子を、ノンフィクションライターの佐々さんが丁寧な聞き取り取材をもとに書かれたものです。

「文庫っていうのはね、みんな色が違うんです。講談社が若干黄色、角川が赤くて、新潮社がめっちゃ赤。普段はざっくり白というイメージしかないかもしれないげど、出版社は文庫の色に『これが俺たちの色だ』っていう強い誇りを持っているんです」(第四章 8号を回せ)

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 乱暴な写真ですいません。上から『海の都の物語』(塩野七生 新潮文庫)、右が『文学全集を立ち上げる』(丸谷才一鹿島茂三浦雅士 文春文庫)、左が『後宮に星は宿る』(篠原悠希 角川文庫)、そして下が我らが『図書館の魔女』(高田大介 講談社文庫)。今まで文庫の紙の色なんて、気にしたことありませんでした。こうして見比べると、確かにみんな違いますね。角川文庫の色は「角川レッド」というのだそうです。独特の色をしてます。

「紙にはいろんな種類があるんだぞ。教科書は毎日めくっても水に浸かっても破れないように丈夫に作られているだろ?コミックにも工夫がたくさんあるんだ。薄い紙で作ったら文庫本の厚さぐらいしかなくなっちまう。それじゃあ子どもが喜ばない。手に取ってうれしくなるように、ゴージャスにぶわっと厚く作って、しかも友達の家に持っていくのにも重くならないようにできている」(同前)

 本の紙には出版社のこだわりと製紙工場の技術が詰まってることを、この本で初めて知りました。被災された方々からの聞き書きですので、「あの時」の息をのむような情景が淡々と書き綴られます。今でも、お読みになりにくい方もいらっしゃると思います。

 三陸鉄道リアス線の復旧おめでとうございます。「紙」はまだ途中なのですが、それを申し上げたくて、ここまでで一度upします。