『図書館の魔女』勉強会 第一巻 1やまざとでのさいごのいちにち④

P12 L9 羽根のすり切れた鵞(が)ペンをふるわせながら

 鵞ペン 鵞鳥(ガチョウ)の羽の軸の先をするどく削り、そこにインクを含ませて筆記用具として用いたもの。ペン先とペン軸とが一体となったようなもの。1870年ごろ鉄製のペンが発明されるまでは、ペンといえばもっぱらこれであった。(『日本国語大辞典小学館

 あれですよね、『ハリー・ポッター』でハリーやハーマイオニーが勉強する時使ってるヤツ。知識としては知っていましたが、あれを見た時は「うわー本当に羽根使ってかくんだー」が正直な感想でした。(なにか冷ややかな視線を感じます)

 原文ですと例えば「They stopped to buy parchment and quiiis.(J.K.ROWLING『HARRY POTTER and the Philosopher's Stone』CHAPTER FIVE Diagon Allry)」。「parchment」が羊皮紙で、「quill」が鵞ペンです。ただ、日本語版ではでは「羊皮紙と羽根ペン」になっています。あれ?と思って手元の英和辞書をひくと「quill」の意味は、「羽ペン、鵞ペン」(大修館『ジーニアス英和辞典第4版」)となっていますが、「羽ペン」あるいは「羽根ペン」は『広辞苑第7版』にも上記『国語大辞典』にも見出し語にはなっていません。不思議ですね。ですから、「鵞ペン」。

 まずは、材料の「ガチョウ」から。

  

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 日本ではあまり見かけないものですから、私はアヒルと区別がつかないのですが、

の仲間。家禽。白い姿はアヒルに似ているが互いに別の種。(ウィキペディア「ガチョウ」) 

 だそうで、

現在飼養されているガチョウはハイイロガンを原種とするヨーロッパ系種と、サカツラガンを原種とする中国系のシナガチョウに大別される。シナガチョウは上くちばしの付け根に瘤のような隆起が見られ、この特徴によりヨーロッパ系種と区別することができる。(ウィキペディア「ガチョウ」品種) 

 へーえ。さらに、

粗食に耐えながらも短期間で成長し、肉質が優れ、良質な羽毛を備える。肉は食用に、また日本ではあまり食用に供されることはないが、世界的には卵も広く食用とされる。羽毛は羽根布団ダウンジャケットバドミントンシャトル鵞ペンなどに用いられる。(ウィキペディア「ガチョウ」概要) 

さらにさらに

 人間に飼われてきた歴史が長いだけに、世界各国の昔話や伝説、神話に頻繁に主役、脇役として登場する。中でも特にイギリスマザーグースは有名である。イソップ寓話ガチョウと黄金の卵や、グリム童話黄金のがちょうDie goldene Gans)の話も広く一般に知られている。

また一方で創作物や小説にも重要な役を担って登場する。アンデルセンの創作童話マッチ売りの少女では、少女がマッチの炎越しに見る幻影の一つに、ご馳走としてのガチョウのローストがある。

セルマ・ラーゲルレーヴ作の童話、『ニルスのふしぎな旅』では、雁の群れに「お前、飛べないだろう」とバカにされたガチョウのモルテンが、空を飛び、トムテスウェーデンでの妖精ノームの一種)により小人にされた主人公ニルスとともに、その雁の群れと渡りを行う。(ウィキペディア「ガチョウ」フィクション)

 と、ヨーロッパではかなり身近な動物なようですね。

で、「ペン」ですが、『世界第百科事典 第2版』(平凡社)から、

筆記具の一つで,毛筆とならんで代表的なもの。語源はラテン語のpenna(翼,羽毛)で,もとは羽毛の軸の先にインキをつけて書くものを指した。羽根ペン,鵞ペンquillともいわれ,5世紀ころから19世紀まで使われていた。古くは文字を書くのに手の指や簡単な尖筆を用いたと思われるが,中空の管がインキを保持する点を利用して,古代エジプトではアシcalamusの茎が使用され,羽根ペンが出現して小さな字が可能になってからも,アシのペンは地中海地方に残っていた。 

 ということで、金属性のペン先が登場するまで実に長きにわたって筆記具として使用されてきたのですね。

  さて、と検索してみると・・・ありますね。「通販」で「羽根ペン」。

 ただ、多くは万年筆やボールペンが先についているもので、「ブライダル用」となっていますね。確かに、結婚式場で受付をする時の筆記用具がコレだったことあります。筆ペンに変わって、主流になっているのでしょうか。筆ペンより書きやすいけど、なんか改まった感じは出るのが支持されているのかな。

 そしてそして、いますね。「鵞ペン」作っていらっしゃる方々。検索するとすぐ出てきますので、興味のある方はご覧ください。

 インターネットって本当にすごい道具だと思います。これがなければ、私は一生、「鵞ペンの作り方」なんて見る機会はなかったかもしれないのですから。まだまだ先は長いので、「鵞ペン」はこの辺で。