『図書館の魔女』の勉強会 第一巻 2しゅったつのときはちかづく①-1
P26L10 ほどなく膝まである黒いローブを胸元(むなもと)にかき合わせた背の高い四十(しじゅう)がらみの男が、脚絆(きゃはん)をつけた革(かわ)の長靴(ちょうか)で・・・
この山里から峠をこえた所に「一の谷(いちのたに)」という都市があることは、鍛冶屋のところで触れられています。その一の谷の王宮から、この日迎えが来ることを、キリヒトは先生から聞かされていたようです。
「ローブ」です。
服飾関係の用語は、時代や国・地域によって同じものが違う名前だったり、違う名前だけれども同じものを指したり、素人にはとても追いつけません。自分の国の服装についてだって同じです。服飾関係の資料を見れば見るほどわからなくなってきてしまったので、とりあえず『日本国語大辞典』の記述を見てみます。
ローブ(英:robe)①ワンピース仕立ての 長くゆるやかな婦人服。
②裁判官や欧米の僧侶が着る長い上着。
これと区別がつかないのが「ガウン」です。
英和辞書にもあたってみましたが、同じような記述でした。袖があり、裾が長い上着ということなのでしょうが、ちょと気になるのが次の部分「胸元にかき合わせた」です。
かきあわせる(他動詞)
①別々のものをまぜて一つにする。まぜあわす。
②手で、離れているものを寄せて合わせる。
③琴や琵琶などを合奏する。
④琴や琵琶などで、弦の調子を整えたあとで、試みに簡単な一定の旋律を奏する。
この部分の「かきあわせる」は②の意味と思われますあとは想像するしかないのですが・・・詰襟のようにボタンできっちり止まっているものを「かきあわせて」とは言わないように思うのですが、いかがでしょう?寒いから?うーん・・・少し前のところでキリヒトは体を動かして少し「汗がにじ」んでいましたから、襟元を押さえるような寒さとも思えません。
ちなみに②の用例は「・・母は襟を掻合わせて坐り直り」というもので、出典は『魔風恋風(まかぜこいかぜ)』(小杉天外=こすぎてんがい)です。1903(明治36)年読売新聞に連載されて大人気となった「女学生」の青春小説だそうです。それはさておき、用例の「搔合わせて」の「母」は、「小紋縮緬(こもんちりめん)の羽織(はおり)、茶萬筋の結城紬(ゆうきつむぎ)の綿入れ」という服装です。和服です。
わざわざ「胸元にかき合わせた」という言葉を使っていることが、気になってしまいました。この後のP28L6に「初めてみる都の正装の男に対して」とありますから、この「ローブ」姿は一の谷の王宮に仕えるものの「正装」であるようです。
さて次は「四十がらみ」です。
①名詞に付けて、「そのものをくるめて」「そのものといっしょに」の意を表す。ぐるみ。
②年齢、値段を示す数詞に付けて、「だいたいその見当」「その前後」の意を表す。値段の場合は多く相場(そうば)で用いる。
ということは「だいたい四十歳ぐらいの」ですね。なんか、思ってたのより若いな。
さて残るは難問「脚絆(きゃはん)」です。