『図書館の魔女』勉強会 第一巻 1やまざとでのさいごのいちにち⑦
P13 L2 小屋を支える掘立柱(ほったてばしら)をくぐって
「掘立柱」です。
「ほりたて(堀立)の変化した語。地面を掘って、直接に柱の根を埋め、立てること。土台を設けないで、直接に地面を掘り、柱を立て、簡単な家を建てること。ほりこみだて。また、その家。(『日本国語大辞典』(小学館))
「ほったて小屋(ごや)」なんて言い方、最近は聞きませんね。
日本の木造建築の場合、地面に表面を平らにした大きな石を置いて、その上に柱を建てました。奈良の平城京跡にいくと、大きな石が並んでいます。一般の家屋でも同じように基礎となる石を置き、その上に柱を建てました。そういう基礎となる石を置かないのが「ほったて」です。粗末な、あるいは仮設の家である感じがしますね。
L2 少年は裏の杣道(そまみち)へ向かう。
「杣道」です。「杣」と聞くと、百人一首の
おほけなく うき世の民に おほふかな わがたつ杣に 墨染の袖
95 前大僧正(さきのだいそうじょう)慈円(じえん)
を思い出して、「まあ、なんか山ん中かなぁ」程度思っておりましたが、いえいえちゃんと勉強さしてもらいました。
まず「杣(そま)」の字自体が「国字(こくじ)」、日本でできた漢字です。畑や峠などと同じです。木へんに山と書いて「山に木を植え付けて、材木を切り出す所の意を表す」(『新字源』(角川書店))ということです。そして狭義だと奈良とか平安の昔、大寺院がその伽藍の造営や修理の材木の供給地として所有していた山林のことを指すのだそうです。
前掲の歌は、天台宗(てんだいしゅう)開祖伝教大師(でんきょうだいし)最澄(さいちょう)の
阿耨多羅(あのくたら)三藐三菩提(さんみゃくさんぼだい)の仏たちに
名賀(みょうが)あらせ給え
という歌を本歌として踏まえているので、「杣(そま)」は比叡山のことになるのだそうです。
他には、
杣人(そまびと)・・・木を切り倒したり、運び出したりすることを職業とする人。
きこり。
杣山(そまやま)・・・材木にするための木を植えた山。
ということで
杣道(そまみち)とは、「杣人の通る道。きこりだけしか通らないような細く険しい道。」(『日本国語大辞典』(小学館))となります。
そういえば、父の実家は最寄りの駅からバスで山道を40分ほど揺られるようなところにあるのですが、川へ遊びに行ったり山に遊びに行ったりした道は、高尾山のような整備された登山道ではなかったなぁ、と思い出しました。人ひとりがやっと通れる程度の細い道でした。あれが「杣道」なんだなぁ。